「カトリック校は同性愛者の教師を雇用拒否してはならない」欧州委員会が声明

ポーランド政務次官の「カトリック校は同性愛者だと公言している教師を雇用拒否できる」という発言に対し、欧州委員会が、EU諸国ではゲイ教師の拒否は認められないと声明を出したそうです。

詳細は以下。

問題の発言を行ったのは、ポーランドで平等問題を担当しているElzbieta Radziszewska政務次官。彼女は2010年9月、カトリック系日刊紙「Gosc Niedzielny」のインタビューで、カトリック系の学校はゲイと公言している教師の雇用を拒否できる、EUの反差別ディレクティブ*1カトリック校に対し、差別禁止法の特別な例外としてそうすることを認めていると語ったのだそうです。

しかしながら2010年10月26日、EUの法務コミッショナーViviane Reding氏は、これを否定する声明を文章の形で発表。それによると、EUの職場における差別禁止法は宗教団体に「職員の雇用にあたり、必要であればある人物の宗教あるいは信念を考慮に入れたり、職員に団体の倫理への忠誠を示すよう要求したりすることができる」ものの、


「仮定のケースについて言明するのは難しいが、欧州委員会は、教師の性的指向が職業資格の本質的かつ決定的な構成要素であるとは解しかねる」
"While it is difficult to make a statement about a hypothetical case, the commission fails to see how a teacher's sexual orientation could reasonably constitute a genuine and determining occupational requirement."

とのことです。

ちなみにRadziszewska氏はテレビ討論の相手のKrzysztof Smiszek氏をゲイだと暴露し、氏が性的指向のせいで偏見を持っていると非難したこともあるんだそうです。はてさて、偏見を持っているのは、いったいどっち?

またRadziszewska氏は、今回の件に関しても、


もし誰かがこれらの(訳注:宗教的な団体や組織の)倫理的要請にそぐわないのに、要請を遵守することが必要不可欠な機関で雇ってほしいと考え、その職が必要不可欠なのであれば、彼らはこのような場合には平等な取り扱いの原則は当てはまらないと気づかなければなりません。
If somebody does not meet these ethical requirements, but at the same time wants to be employed in institutions where compliance with these requirements is essential and where they are indispensable for the job, they must take into account that the principle of equal treatment does not have to be applied in their case.

と声明を出しているんだそうで、とにかく「宗教」や「倫理」を旗印にすれば平等な取り扱いはしなくていいという信念は変わっていない模様です。日本にもいっぱいいますけどね、こういう人(人によっては宗教ではなく『子供』やら『本能』やら『生理的嫌悪感』やらが旗印になるようですが、本質的には一緒だと思います)。そんなに簡単に例外が作れる「平等」なんて、ぜんぜん「平等」じゃないと思うんですが。重ねて言うけど、偏見を持っているのは、ゲイかそれともRadziszewska氏のような人か、いったいどっち?

単語・語句など

単語・語句 意味
personnel 人員、全職員、人事担当部局、人事部[課]
communique (外交上などの)公式発表、声明、コミュニケ
European Commission 欧州委員会
Junior Minister 政務次官
directive ディレクティブ(EUが加盟国に出す法案の指示文書)
justice commissioner 法務大臣
consutitute 構成する、…の構成要素と成る、…の一部をなす
determining 決定的な
outfit (協同活動の)団体、集団、一団、仲間、チーム
compliance 遵守、服従、承諾、従順

*1:ディレクティブ・EUが加盟国に出す法案の指示文書