クリスチャン系ニュースサイト「ゲイ、『WiiRape』を開発!」→実は大がかりなジョークサイトだった

ニューヨーク・タイムズが、一見超保守的クリスチャン風なニュースサイト「ChristWire.org」が、実は大がかりなジョークサイトだったと報じています。実際、これは「ニュースを信じて疑わない人の愚かさを暴露する」という目的で作られたサイトだったとのこと。確かにこのChristWire.orgは、よく読めば皮肉たっぷりのジョークサイトだとすぐわかる構造になっているのですが、騙された人も少なくないようです。

詳細は以下。

このChristWire.orgというのは、

なんていう記事を日々配信するサイト。最近のヒットは、2010年8月10日のコラムの、

です。このコラムの15のチェックリストというやつが傑作で、「ジムの会員なのにスポーツに興味がない」「友だちと一緒にいる時はあつかましく、辛辣で、皮肉屋になる」「ポップカルチャーが大好き」などの項目があるとのことです。Huffington Postやラジオで話題となったため、このコラムは830万回も閲覧されたとか。

で、冒頭に書いたように、実はこのChristWire.orgは、大仕掛けのジョークサイトだったんです。要は、bogusnews(ボーガスニュース)の狂信的クリスチャンバージョンだと言えば日本の読者には伝わりやすいかも。

このサイトを始めたのは、ソフトウェア開発者のBryan Butvidasさんと、サイト開設時は学生で、現在は病院で職員のKirwin Watsonさん。2人は2005年にネットで出会い、2007年頃にButvidasさんがChristWire.orgのドメインを購入したとのこと。ちなみに2人とも無神論者ではなく、Butvidasさんは「油断のないカトリック」。Watsonさんは特定宗派に属さない「ほぼ敬虔な」プロテスタントなんだそうです。そして彼らのターゲットはクリスチャンではなく、「ニュースで見聞きするものを信じて疑わない人」だとのこと。


「ニュースメディアには時々、非常に愚かな言動がはびこっています」とWatson氏は語った。「人はお気に入りのニュースチャンネルを見て、それを疑わず、翌日会社でそのまま口にします。まったく良くないことです」。
“There’s just rampant idiocy in the media sometimes,” Mr. Watson said. “People watch their favorite news channels, don’t question it and will regurgitate it the next day at the office. That is no good at all.

ChristWire.org自体は、よく見ればすぐジョークサイトだとわかる仕掛けになってるんですよ。タブに「ヘイトメールと質問」なんてところがあったり、トップページ下部の予定欄に「現在、ボイコットの相手を誰にするか決めるべく祈り中。続報をお待ち下さい」なんて書いてあったりしますしね。それに何より、記事が! 記事が面白すぎます。ざっと読んでみてあたしがたいへんウケたのは、たとえばこのへん。

つまり、黒人が白人女性とバーチャルセックスしたいがために、ゲイに金を出してWii用のレイプゲームリモコンを作らせたという嘘記事なわけ。リモコンの捏造写真が笑えるので、ぜひ元記事もごらんください。ちなみに、この記事の締めくくりはこうです。


ニンテンドーはこのような堕落した発明を恥じるべきだ。次は何だ? レズビアン・舐め舐めコントローラーか? ヘッケラー製レインボー尻アタッチメントか? 妻や子供がヘイトクライムの犠牲になる前に、すべてのニンテンドー製品をリコールしよう。ああ、考えてみたまえ、この製品の支持者やファンは誰なんだ?
Nintendo should be ashamed for such vile inventions. What is next? The Lesbian Lick controller? or the Rainbow Butt Heckler attachment? I say we call for a recall on all Nintendo products before your wife and children are victims of hate crimes. Oh and guess who is a backer and fan of this product?

こんなのを読めば、これが保守派を皮肉るジョークサイトだとわかりそうなものなんですが、実はけっこう騙されていた人もいるんだそうです。たとえば、本物の保守派サイトRenewAmericaのMarie Jonさんは、うっかり自分の記事をChristWire.orgに載せる許可を出してしまっていたとのこと。また、The Huffington PostのブロガーKatla McGlynnさんは、当初「私の夫はゲイかしら?」(Is My Husband GAY? | ChristWire)がジョークと気づかず、「ぴったりした服を着ているからと言って同性愛者とは限らない」などとする反論記事を書いてしまったそうです。

ButvidasさんとWatsonさんが正体を明かすと決めたことに対し、ニューヨーク・タイムズは以下のように書いています。


私たちにできるのは、公に正体を明かしても彼らの計画がだめにならないよう祈ることだけである。そしてその計画とは、 Butvidas氏のこちらの発言で雄弁に要約されている。「人がどんなに愚かかさらけ出すために記事を書こう」。
We can only hope that public exposure does not undermine their project, eloquently summarized by Mr. Butvidas: “Let’s write stuff to expose how stupid people are.”

こういうことを大真面目にやってしまうところが、アメリカの面白いところだなあ。日本でこれをやったら、一旦鵜呑みにしてから「騙された」と逆ギレする人が続出しそうですけどね。

単語・語句など

単語・語句 意味
infiltrate 〜に潜入する、浸透[湿潤]させる、浸透する、侵入させる、潜入させる
feign 〜を装う、〜のふりをする
sassy 生意気な、あつかましい、えらくしゃれた、粋なかっこうの、スマートな
rampant 激しい、荒々しい、生い茂る、半もする、はびこる、大流行の
idiocy 非常に愚かな状態、愚かな言動
regurgitate (人が言ったこと・情報)をオウム返しに言う、理解しないで繰り返す
Afro-Saxon 白人気取りの黒人