英国のトランス女性、年金受給権を求め雇用年金省を訴える

英国のトランス女性が、年金の受給開始年齢で不利を強いられているとして雇用年金省を訴えているというニュース。

この女性Christine Timbrellさん(68)は2000年に性別適合手術が完了していますが、約43年間連れ添った妻のJoyさんと離婚していないため、法律上は女性と認められていません。そして英国の現行法では、女性の年金の受給開始年齢が60歳であるのに対し、男性のそれは65歳です。そこでChristineさんは、60歳まで遡って年金を受け取る権利を求めてこの訴訟を起こしたとのこと。
以下、Christineさんの弁。


「雇用年金省は、離婚してシビル・パートナーシップ登録すれば問題は解決すると言っていますが、それでは違うのです。
「私たちは同性愛者ではないし、同性愛者のふりをするのは偽善です。もし私たちがシビル・パートナーシップ登録をしたら、私たちは偽善者になってしまいます」
“The Department of Work and Pensions say the remedy is for us to divorce and go into a civil partnership, but we say that’s not the same.
“We are not gay and it would be hypocritical to pretend that we are. That is what we would be doing by entering into a civil partnership.”

ちなみに「ロンドンの異性愛者カップル、シビル・パートナーシップ登録を断られ訴訟を起こす - みやきち日記」で紹介した通り、英国の少なくともロンドンでは、異性愛者はシビル・パートナーシップに登録できなかったはず。また、ChristineさんとJoyさんは信仰上の理由で離婚したくないのだそうで、なおさら「離婚してシビル・パートナーに」という手は使えなくなってしまいます。

なお、雇用年金省のJeremy Johnson氏は、これが「難しい状況」であることを認めつつも、

  • 女性として生まれた女性は他の女性と結婚できない
  • もしChristineさんとJoyさんの両方に60歳からの年金受給を認めれば、異性婚カップルよりも「優遇されている」ことになってしまう

と述べているとのこと。
そう言えば、日本の「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」にも、「現に婚姻をしていないこと」という条件がありましたよね。同性婚の状態になるのを避けるためだと聞いたことがありますが、そもそもなぜ同性婚になったらいけないのかがよくわかりません(結局、異性婚だけを想定した制度設計を温存した方がマジョリティにとって都合がいいってだけのことでしょ?)。また、法律婚やシビル・パートナーシップの枠内にあるものだけが優遇されること自体がおかしいという視点もあると思います。いずれにせよ、丸々5年間分の年金を逸失するというのは、そりゃ、痛いよねえ。

英国での女性の年金受給開始年齢は今後少しずつ引き上げられる予定で、2020年までには男性と同じ65歳になるんだそうです。だからこうしたトラブルはそれまでの過渡期特有のものとも考えられますが、だとしてもなんとかならんもんかと思います。いくらシビル・パートナーシップ制度を作ったって、「異性愛者の法律婚カップル」「同性愛者同士のシビル・パートナーシップ」以外は枠からこぼれ落ちてしまうというのはやはり、ずさんなのでは。たとえば「異性愛者の同性同士で、人生のパートナーとして共同生活をしている」というパートナーシップのありようだって認められていいはずだと思うんですよね、あたしは。多様性の尊重というのはそういうことだと思うんですけど、違うかしら。

単語・語句など

単語・語句 意味
Department of Work and Pensions 雇用年金省