「ゲイの俳優には『見えない障壁』がある」コリン・ファース語る

英国の俳優コリン・ファースが、カミングアウトしているゲイの俳優は「見えない障壁」のために主役がもらえないと発言したというニュース。

コリン・ファース自身はストレートで、トム・フォード初監督作品『A Single Man』の中でゲイ役を務めています。こんな映画です。

ファースはこの映画の公開初日である2010年2月1日に、以下のごとく語っているそうです。


異性愛者として知られている人がゲイの役を演じると、賞*1がもらえます。ゲイ男性が異性愛者の役をやりたいと思っても、役はもらえません――そして、ゲイ男性がそれならゲイの役をやろうと思っても、やはり役はもらえないんです。
「この件については自分も共犯だと感じていると申し上げておかねばなりません。共犯者でありたいわけではないのです。私は、誰でもどんな役でも演じることを許されるようでなければならないと思います。しかし、いまだ越えることのできない見えない壁があると私は思っています」
"If you're known as a straight guy, playing a gay role, you get rewarded for that. If you're a gay man and you want to play a straight role, you don't get cast – and if a gay man wants to play a gay role now, you don't get cast.
"I think it needs to be addressed and I feel complicit in the problem. I don't mean to be. I think we should all be allowed to play whoever – but I think there are still some invisible boundaries which are still uncrossable."

元記事にもありますが、これってルパート・エヴェレットの「ゲイの俳優は、成功したければクロゼットにとどまるべきだ」という発言(参考:ルパート・エヴェレット「ゲイの俳優はクロゼットにとどまるべき」 - みやきち日記)にも通じるものがありますね。

うろ覚えですけど、映画『フィラデルフィア』が大当たりするまでは、ゲイ役をやりたがる異性愛者の役者ってかなり少なかったんじゃありませんでしたっけ。ところがトム・ハンクスがオスカーを獲って以来、ノンケ役者がゲイを演じることが一種のトレンドになり、マスコミに向かって「僕はゲイではありません」「キスシーンが気持ち悪かったけど、がんばりました」みたいなことをにこやかに言いつつゲイ役をやる人が増えてきた、と。

でもその反面、同性愛者の俳優がノンケ役を演じる機会は少ないし、演じたところで「キスシーンが気持ち悪かったけど(略)」なんて笑いながら言うことは決して許されないわけです。何なんでしょうね、この非対称性。やはり大真面目に異性同士のロマンティック・ラブを再生産しまくって食っている業界(パニック映画でもSFでもくどいほど『男女の愛』が出てくるもんね)だけに、そのへん保守的だってことなんでしょうか?

単語・語句など

単語・語句 意味
complicit 共犯の、共謀の

*1:「報酬」と訳してもいいかも。