米研究、同性カップルが退職時に直面する不平等を明らかに

米国で2009年10月23日、同性カップルが退職時に直面する不平等についての研究結果が発表されたというニュース。

これはUCLAウィリアムズ・インスティテュート法学部によって行われた研究で、レズビアンとゲイは退職にともなう所得が異性愛者より少なく、遺産相続でも不利を強いられていると結論づけているそうです。論文の著者Naomi Goldberg氏は、


調査の結果、特に女性の同性カップルは、退職にともなう収入が異性の婚姻カップルよりはるかに少ないことが判明した。
"The findings show that, in particular, female same-sex couples have far less retirement income than different-sex married couples,"
と述べているとのこと。この研究では、以下のようなことがわかったそうです。

  • 65歳以上の女性の同性カップルは、収入が異性の婚姻カップルよりおよそ20パーセント少ない。
  • 女性同士のカップルのうち、雇用者負担の退職金制度の恩恵に少なくとも片方があずかれるカップルは、50パーセントだけである。なお、異性同士のカップルでは56パーセント、男性同士のカップルでは79パーセントがこの条件にあてはまる。
  • 年配の同性カップルは、異性カップルに比べ、退職にともなう収入が少ない。つまり、退職金、遺族年金、障害者年金などが少ない。
  • 男性同士のカップルは異性同士のカップルより収入が少ないのに、労働年数は長い。

さらにこの研究では、パートナーまたは配偶者が亡くなったときの制度の不平等についても分析しているとのこと。以下、箇条書き。

  • 婚姻防衛法は連邦レベルの法であるので、たとえ同性婚が合法化された州であっても、雇用主は福祉や年金の面で同性カップルを差別することができる。よって、同性カップルは遺族年金を受け取れないことが多い。
  • 同性カップルでパートナーを亡くした者は、社会保障手当や遺族給付金を受け取れない。そのため異性カップルに比べ、年間約5700ドルの不利をこうむっている。
  • 同性カップルは異性カップルと違い、配偶者が死亡した場合、401k(米国の確定拠出型年金制度。退職後に口座からお金を引き出すまで、投資利益に税金がかからない)からすぐにお金を引き出さねばならない。よって、本当に必要なときまで引き出さずにおいた場合に比べ、税率の面で不利である。

なお、この論文の全文(PDF)は以下で読めます。

401kについてはちょっと違うかもですが(日本型401kというのもありますが、まだそれほどメジャーじゃないと思うし)、あとは日本もあまり変わらない状況なんじゃないかと思いました。特にレズビアンカップルの貧乏の話は他人事じゃないわ。笹野みちるの「お金を貯めよう」でも歌いながら頑張って貯金せねば。いや、もちろん社会のシステムを公平なものに改善することが一番大事なんですが、一朝一夕には変わらないでしょうからね。
それにしても、昨今では「アメリカでは同性婚が認められた州もあって、同性愛が容認されつつあり云々」なんてことがよく言われますが、連邦レベルで法律が変わらない限り、実はかなりの面で差別し放題なんですね。あと、ゲイ男性のカップルがヘテロカップルより収入が少なく、労働年数が長いってこともちょっと以外でした。男×男のダブルインカムで、異性カップルよりたくさん稼げるんじゃと想像してたんですが、そうでもなかったんですね。結局、女だろうと男だろうと同性カップルは経済的に不利ってことですか。「ゲイは可処分所得が多いから購買層として有益」みたいな言説を鵜呑みにしちゃいかんな、と思いました。

単語・語句など

単語・語句 意味
pass on …を[人に]譲る、与える、遺贈する
retirement income 退職に伴う所得
retirement plan 退職(後)に関する諸計画
lose out 不利をこうむる
rollover 借り換え、支払い繰り延べ、(融資契約などの)更改