「男性は兄の数が多ければ多いほどゲイになりやすい」カナダの研究者が発表

ブロック大学(カナダ)の社会心理学者Anthony Bogaert氏が、

  • 男性は兄の数が多ければ多いほど同性愛者になりやすい
  • これは環境因子によるものではなく、子宮の中で起こる生物学的なメカニズムによるもの

という研究結果を発表したというニュース。

実はこれまでにも、「男性の性的指向は兄の数に影響される」と指摘する研究は複数あったんだそうです。しかし、それがたくさんの兄たちと暮らすという環境によるものなのか、生物学的なメカニズムによるものなのかは解明されていなかったとのこと。

今回Bogaert氏は約千人のカナダ人男性を調査し、弟が同性愛者になる確率は兄(たち)と一緒に育てられたかどうかは無関係で、単に血のつながった兄が何人いるかによって推測できると結論づけています。氏は母集団に対し4種の異なった分析を行い、その結果から、

  • 性的指向の発端は胎児期にある
  • 男性が兄が多いほど同性愛者になりやすいのは、「おそらく男児の妊娠または出産を母体が『記憶』している」から
  • つまり、母体は何人の息子を産んだかを「覚えて」おり、男児を多く産めば産むほど、下の子は同性愛者になりやすくなる

と主張しているとのこと。

じゃあレズビアンはどうなんだ、あたしに姉はいないぞ、と思ったのですが、そのへんも説明されていました。最近の理論で、母体は男の胎児を身ごもると免疫反応を示すという説があるんだそうです。つまり、女性の免疫システムが男児を異物として「記憶」する一方で、女児は記憶しないという可能性があるわけ。だからBogaert氏の説は男性同性愛者にしかあてはまらないというわけですね。なるほど。

あと、こういう研究結果を見て「私もう男の子がたくさんいるから、次に出産したらゲイになるかも!」と中絶に走るようなバカ親が出てきたら困るとも思ったんですが、元記事ではそのあたりもきちんとフォローされていました。この研究では、

  • 最初に生まれた男の子が同性愛者になる確率は2パーセント。
  • 一方、5番目に生まれた男の子が同性愛者になる確率は6パーセント。
  • つまり、5番目の男児でさえも異性愛者になる確率が94パーセントもある。

となっているんだそうです。また、カナダの研究機関Centre for Addiction and Mental HealthのRay Blanchard氏によると、そもそも人口の2〜4パーセントが同性愛者と推測されるんだそうで、ならば2パーセントが6パーセントに増えた(それも5番目の男児でやっと)ぐらいで大騒ぎする方が変、ということみたいです。さらに、生まれた順番だけで性的指向の説明がつくのはゲイ男性7人のうちたったの1人だけであり、残りの6人については説明できないとのこと。結局、この研究は男性同性愛のほんの一面を説明するだけのものであって、これで全体像が把握できるというわけではまったくないみたいです。だよねえ。そうじゃなかったら、少子化ががんがん進んでいる日本にこんなにゲイがいるはずないもんね。

こういう「同性愛の原因を探る」みたいな研究にはトンデモなものが多いので、ひとまずこの説も眉に唾を付けて聞いておこうとは思いますが、とりあえず、飲み屋の話のタネぐらいにはなるかもしれませんね。

単語・語句など

単語・語句 意味
fraternal 兄弟の、友愛の、二卵性の
prompt (行動・考え・感情などを)起こさせる、促す、誘発される、引き起こす
gestation 妊娠、懐胎
fetus (特にヒトの妊娠3ヶ月以内の)胎児