『GENEZ-2』(深見真、富士見書房)感想

GENEZ-2  ジーンズ (富士見ファンタジア文庫)GENEZ-2 ジーンズ (富士見ファンタジア文庫)

富士見書房 2009-09-19
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「本気で作ったアメコミ原作映画」の面白さ

パワードスーツをまとった高校生傭兵が悪と戦うアクションもの。というといかにもライトノベル的に聞こえますが、実際にはこれ、ラノベというより「大人がカネと情熱を注ぎ込んで本っっ気で作ったアメコミ原作映画」の世界だと思います。面白いです。1巻より2巻の方がより好きだなあたしは。

ネットの評判を見る限り、1巻では、パワードスーツや実銃の世界にゴーレムや精霊などを登場させることに違和感を持った人もいたみたいです。でも2巻を読めば、まさにそういう要素こそ大切だったのだとわかります。だってこれアメコミなんだよ! アイアンマンやX-MENファンタスティック・フォーバットマンスパイダーマンの世界を、本気で活字使って再現してるんだよ! 

空中キャンプさんが、『ウルヴァリン : X-MEN ZERO』について


これは何度でもくり返して主張したいが、手から鉄の爪がにょきっとでてきたり、目からビームがでたりする人たちの映画を作るというのは、とても尊い行為であるし、それだけでたいへんに大きな意味を持つことである。わたしたちは、目からビームをだすことのすばらしさについて、もっと真剣に考えなくてはならないし、より深く追求していかなくてはならない。

と書いていらして、ものすごく共感したんですが、そういう意味でこの『GENEZ-2』もすばらしく尊いと思うんです。目からビームを出すキャラこそいませんが、高層ビル街でのセルジュVSジガ戦のダイナミックな動きなど、もう完璧にアメリカン特撮アクション映画の世界でワクワクさせられます。『武林クロスロード』が香港アクション映画だとしたら、こっちはハリウッド映画ですね。要するに、これは小説がどうした近未来ネタがどうしたという枠を越えた「読む娯楽映画」なんです。今、1巻を読んだときそこまで読み切れていなかった自分を反省中です。

今回は他に、ひきこもりハッカー「布施七湖」の能力を共感覚を使って表現するという新機軸や、さらにクライマックスで七湖が「見る」ものとして超有名なアレを持ってくるという展開もすばらしかったです。「武装メイド部」がただのにぎやかしエピソードではなく、一種の伏線となっているところも。「戦車砲は実はデリケートな武器なので」、砲身をゆがませるだけで「戦力としてはほぼ使い物にならなくなる」なんていうリアルなネタもやはりよかった。

1巻とおなじく鈍感主人公が美少女たちにモテまくりという点だけはびみょーにひっかからんでもないのですが、これはメイン読者層たる少年ズの夢ってことで納得可能。結論としては、アクション映画好きなのに「俺なんて月のこづかい4000円だよ映画なんてそうそう見に行けねーよ」と思ってる中高生とかにすごくおすすめな作品です。あ、ちなみに深見作品でありながら同性愛要素はほぼない(一瞬だけ出てくるAVの場面があんなだったりはしますが……)ので、そこだけ注意。