ストーンウォール再び? 警察、テキサスのゲイバーを急襲

1969年6月28日の「ストーンウォールの反乱」40周年を記念し、今年の6月は世界中でさまざまなプライド・イベントが開催されました。上記リンクは、皮肉にもストーンウォール以来きっかり40年にあたる2009年6月28日に、米国テキサス州フォートワース市のゲイバー「レインボー・ラウンジ」が、警察とテキサス州酒類取締委員会(TABC)の踏み込み捜査に遭ったというニュース。バーにいた人のうち7人が逮捕され、1人が警官に頭蓋骨を折られて病院に運ばれたとのこと。

警察の発表では、逮捕事由は「公共の場での泥酔」(public intoxication)。逮捕者のうち2名が「公衆の面前で泥酔し、警官に対してあからさまに性的な行動をとった」、1名が「泥酔して警官の股間をつかんだ」ということになっています。他に、酔っていて逮捕に抵抗したために地面に押さえつけられた者もいた、と発表されています。

ところが目撃者の証言は、これと食い違っているようです。まずは、逮捕の場面を目の前で見ていた人の話。


警察はその人(訳注:逮捕された人のこと)に酒を飲んでいるかと訊ね、彼は少し飲んでいると言いました。すると警官たちは皮肉たっぷりに「そうか、どれだけ飲んでいるか見てやる!」と言って、彼の権利を読み上げながらプラスティックの手錠をかけました。その人は何も悪いことはしていませんでした。
They asked the guy if he had been drinking, and he said some, and they snidely replied, “Well, we’ll see how much!” and plastic handcuffed him as they read him his rights The guy was doing NOTHIG wrong.
次に、実際に逮捕された人の話。

ジョージ・アームストロング(41)が店に30分ほど滞在していたとき、警察官たちが踏み込んできた。彼は警官のひとりにほほえんでピースサインを出したが、タックルされて床に倒され、腕を背中側にねじられたと述べた。
「警官は私に、逮捕への抵抗をやめろと叫んでいましたが、私は何もしていませんでした。ひどく恐ろしかったです。肩の骨を折られたと本気で思いました」とアームストロングは月曜日に語った。「あんなに恥をかかされ自尊心を傷つけられたことはありません。私は警官に対し、何もしていなかったのです」
アームストロングは逮捕の翌日釈放されて病院に行ったと言った。レントゲン撮影の結果、彼の肩と背中はひどい打撲と捻挫を負っていることがわかり、腕を三角巾で吊された。アームストロングは、レインボー・ラウンジの中で誰かが猥褻なジェスチャーをしたり警官の体をつかんだりするのは見なかったと語った。

George Armstrong, 41, said he had been at the Rainbow Lounge about 30 minutes when officers stormed inside. He smiled and flashed a peace sign at one officer, but was then grabbed and tackled to the floor with his arm twisted behind his back, he said.
“He was yelling at me to stop resisting arrest, but I wasn’t doing anything. It was horrible. I really thought he had broken my shoulder,” Armstrong said Monday. “I’ve never been so embarrassed and humiliated. I didn’t do anything to him.”
Armstrong, who was arrested, said he noticed that other people who were arrested were injured or said they had been tackled by police.
Armstrong said he was released from jail the next day and went to a hospital, where his arm was put in a sling after X-rays determined his shoulder and back were severely bruised and strained.
Armstrong said he didn’t see anyone inside the Rainbow Lounge make lewd gestures or grab the officers.

さらに、こんな声もあります。


レイモンド・ジルは日曜午前の深夜にそのバーにいた。彼は、テキサス州酒類取締委員会の係官のひとりが彼をターゲットにしたと言った。「私は彼に、どうして私は外に引っぱり出されたのかと訊ねました。彼は、私の歩き方のせいだと言いました。私が酔っているように見えたのだそうです。しかし、既に述べた通り、私は踏み込み捜査の30分前にバーに着いたのです。私は座っていて、警察がやってくるまで立ち上がっていませんでした。誰も私が歩くところを見ていません」
Raymond Gill was at the bar early Sunday morning. He says one of the TABC officers targeted him. "I asked him why I was pulled outside. He stated it was because the way I was walking. He said I looked like I was drunk. But as I stated, I got to the bar 30 minutes before they got there. I sat down had not got up before police got there. No one saw me walk."

ちなみに頭蓋骨を折られて脳から出血し、ICUに担ぎ込まれたチャド・ギブスン氏が警察から受けた暴力はこんな。


ダニー・クロケットは4人の警官がギブスンを拘束するのを見たと言った。「彼らは彼の首を絞め、引っ張ってから壁に叩きつけました」と彼は言った。
Danny Crockett said he saw four officers detain Gibson. "They choked his head back, pulled him back and then slammed him against the wall," he said.

仮に100万歩譲ってこれらの声が全部捏造で、警察のしたことがすべて正しかったとしても、「なぜ、この日に?」という疑問は残りますね。なぜ、よりによってストーンウォールの反乱40周年のこの日に、ゲイバー(ゲイクラブ)の強制捜査なのかと。現場にいた人は、こう言っています。


私は妹(姉?)のケリーと、この日にこの特定のクラブで(強制捜査を行う)ということがどんなにうさん臭く見えるか等を説明しながら、警官たちにここで何をしているのかと訊きました。「匿名の情報」「不満を持っている元バーテンダー」などを引き合いに出して説明しようとしたのは、「州の警察官」ですが、私は名前を覚えていません。私たちは、このクラブは1週間ずっと営業しているのだから、不満を持っている元バーテンダーの情報というのはいささか疑わしく思えると指摘しました!
My sister Kelly and I simply started asking what they were doing here, stating how suspicious it seemed on this date and in this specific club, etc. This was a “State Policeman,” whose name I forgot, who tried to explain their actions by referring to “anonymous tips” and “disgruntled ex-bartenders.” We pointed out the place was open a week, so the disgruntled ex-bartender source seemed a bit unlikely!

既に100人以上の人がこの捜査に抗議するデモを行い*1、また、地方議員や市長からも詳しい調査報告を求める声が出ている*2とのことです。

単語・語句など

単語・語句 意味
intoxication 酩酊、酔った状態
explicit あからさまな、露骨な、性表現があからさまな、どぎつい
snide 悪意に満ちた、人を傷つけるような、傲慢な、皮肉たっぷりの、嫌味な
repugnant 嫌な、嫌いな、不快な、嫌でたまらない、いとわしい
groin 股間、そけい部
apprehend 逮捕する
disgruntle …を不機嫌にする、不平[不満]を抱かせる
sling 三角筋
reassure 再確認する