どうして女の身体って、不健康なのが「美しい」ってされがちなんだろう

欧米と中国の「不健康=美しい」状態

うろ覚えですけど、昔のヨーロッパなんかじゃ「淑女が血色がいいなんてもってのほか」とわざわざ血を抜いて顔色を青白くしたり、「握手するときは手がひんやり冷たくなくては。ましてや血管が浮いてたりしちゃ絶対ダメ」と、人に会う前には一定時間ずっと手を頭上に挙げてわざと末端の血流を減らしたりしてたんじゃありませんでしたっけ。あと、あの不健康なコルセットってものもありましたよね。あまりに胴体を締めすぎて、苦しさのあまり貴婦人が失神しまくったってやつ。ヨーロッパ人の骨格をウエスト40cm台まで無理やり締め上げてたら、そりゃ失神もするわって感じなんですが。
最近ではコルセットこそ流行りませんが、たとえばアメリカ南部白人あたりには「レディーは汗をかかないものよ」とか言って女性が運動するのを嫌う傾向があったりしたと思います。『フライド・グリーン・トマト』の小説版にも、なんかそんなような描写があったような。若い世代だと多少話は変わってきますが、少なくともちょこっと前まで、そういう文化があったわけです。
ことは欧米だけではありません。たとえば、中国には纏足ってやつがありました。「そんなの大昔のことだろ」と言うなかれ、あたしの上海人の友人のおばあさんは実際に纏足されてたそうですよ。ほんの少し前まで、女性の足の骨を変形させろくに歩けなくした姿が「美しい」とされる文化が、確実にあったわけです。

日本もこれらを笑えません

現代日本に生きるあたしたちも、これらの風習を笑えないと思います。たとえばハイヒール。あれ、現代の纏足ですよ。小さなハイヒールに押し込んだ足や、それゆえに独特のフォームになる歩き方を「美しい」と思いこんでる男性陣*1はお気づきでないかもしれませんが、ハイヒールばっかり履いてる女性の足ってタコや靴ずれができやすいし、それどころか骨まで変形しちゃってる人もいっぱいいるんですよ。
あと、「レディーは汗をかかないもの」とまでは言わないにしろ(そもそもこの高温多湿な気候でそれを謳うのは無理)、「女は筋肉をつけちゃダメ」という抑圧がすごいですよね日本って。ダイエットのために運動を始めても、それでささやかな筋肉がつくと「筋肉がついちゃった! たいへんたいへん!」と落とそうとするのが日本女性*2。「筋肉がついたら嫌だから」と食事制限(置き換えダイエットとかねー)偏重でLBM*3を削って体重を落としたがるのが日本女性。
若いうちなら、そうした不健康な痩せ状態もどうにかこうにか維持できますよそりゃ。冷え性肩コリ腰痛便秘などを抱え込みはしつつも、なんとか細さは保てるでしょう。でも中高年になったら、代謝の悪さが災いして一気にメタボ突入。で、脂肪細胞から分泌されたadypokineがインスリン抵抗性を発揮しまくって、見事な糖尿病予備軍に。骨格筋を増やしておけばそこからmyokineが分泌されてインスリン抵抗性を減弱したり、動脈層への抗炎症作用を発揮してくれたりするのに、「筋肉つけたくないのぉ」とクネクネしてた/してるツケ*4が来て、生活習慣病一直線。男性はそんな女性たちを「トシのせいだ」「オバサン体型」と嗤って、まだ若くて筋肉レスな細さを維持できてる女性に群がってれば済みますが、取り残されたオバサンたちはいったいどうすりゃいいんですか。

なんでこういう風なんだろう

なんでこういう風なんだろう、と思うわけですよ。なんで、女性(特に、若い女性)の身体というと不健康な状態が「美しい」とされちゃうんでしょうか? 女なんてどんなに鍛えても腕力では男に勝てない*5存在なのに、どうしてここまで血行が悪く・筋肉がなく・体力もなく・ろくに走れもしない状態を「美しい」と規定してそこに追い込み続ける必要があった/あるんでしょうか?
どれだけ考えても、わかんないのよこれが。どっかにそういう研究をしてる人がきっといると思うので、論文探して読んでみたいです。

*1:全部の男性がそうだとは言いませんが。でも、顔乳尻股間ばっかり見てないで、傷だらけの素足も見てやってくれと思わんでもない。痛々しいのよこれがまた。

*2:例外がいないわけではないですが。

*3:Lean Body Mass、すなわち除脂肪体重。ちなみに食事制限のみのダイエットは、下手をすると筋肉ばかりか骨まで分解してしまうことがあるそうです。

*4:なんの訓練もせずに歳をとった場合、40歳すぎぐらいから筋肉中の速筋繊維の数そのものが減っていくそうです。

*5:こっちがヒーヒー言いながら50kgでベンチプレスしてる横で、涼しい顔で100kgとか150kgを挙げちゃうのが野郎というものです。力では永遠に勝てません。