「愛」よりも「好意」が大切

たまたま読んでた2冊の本の内容が微妙にリンクしてたんで、メモ。片方はノンフィクション、片方は小説なんだけど、どちらも以前から「愛だの恋だのって大騒ぎするより、猫みたいにただ好きな人になついてだらだら過ごしてる方がマシ」と思ってるあたしにはとても納得がいく内容でした。
※ちなみにこのエントリ中の「愛」という語はアガペやフィリアではなくエロスを指します。念の為。

どんな人が、人を愛せるのか?

以下、『ぼくたちも妊娠できますか? 平凡な日常を驚きの世界に変えるQ&A』(ビル・ソーンズ&リッチ・ソーンズ著、丸山聡美訳、ハヤカワ文庫)pp93-94より引用。

何歳から人を愛せるようになるの?
カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の心理学者スチュアート・フィショフ博士によれば、人は自我という枠の外に出て、別の人、もしくはその人のイメージに愛着をもてるようになれば、人を愛せるそうです。小学校一年生、六歳くらいの子どもでも、完全に自己中心的な考え方を卒業していれば、だれかを愛することが可能です。しかし自己中心的な人は年齢を問わず存在します。だから大人でも、自己の欲求ばかりの考え方から卒業できない人は、恋愛対象の人を自分になにか与えてくれる人としてしか見られず、自分がなにかを与えたいとは思いません。こういう人は、ほんとうの意味でだれかを愛することができません。
「六歳の恋愛は幼く見えるかもしれないけど、ほんものの愛です」フィショフ博士は力説します。多くの人は欲望を愛情と勘違いしているので、六歳や十歳の子どもが人を愛せるとは思えません。「子どもだって人を愛せます。ただ長続きはしません。愛は年齢にかかわらず、短命なものです。長いつきあいを可能にするのは愛ではなく、好意ですよ」

ポイント
  1. 欲望と愛は別物。
  2. 自己中心的な考え方を卒業していれば、子どもでも誰かを愛せる。
  3. 愛は長続きしない。長続きするのは、愛より好意。

なぜ愛は長続きしないのか?

以下、『スクランブル』(若竹七海著、集英社文庫)pp251-252より引用。

「まだ終わってもないうちから空しさを覚えるなんて、普通の人間にできるわざじゃないよ。大抵はどっぷり非日常にひたりこんで、その快感を全身で味わうもんだ。お夏、その性格直さないとまともな恋愛できないよ」
「あんたに言われたかないね。だいたい、まともな恋愛ってどんなんよ」
「ハレ。祭り。非日常」
宇佐は立ち上がって窓を閉めた。校庭の馬鹿騒ぎが少し、遠いものになる。
「日常のなかに恋愛はないって言いたいの」
「うちの父親がそうだからね」
夏見は傾けかけていた缶ジュースを机に置いた。
「なによ、それ」
「愛人の家に行ったきり、たまにしか帰ってこない」
「へえ……って、え、えええっ!?」
「少し前までは、逆だったんだけどね。つまり、父親にとってうちにいるときが日常で、愛人宅が祭りだった。それがいまでは逆。父親にとってうちに帰ってくるのが非日常になっちゃった。どうなったと思う」
口籠る夏見を見向きもせず、宇佐は続けた。
「花束だのお寿司だの、日常は縁のない贅沢を山ほど抱えて帰ってくるようになった」
図書室は白々とした沈黙に満たされた。七万冊の本はびくとも動かず、それでいて圧倒的な存在感でふたりを押し包んでいる。

ポイント
  • 恋愛は一時の祭りであり、残酷なまでに非日常的なものである。

総まとめ

  1. 恋愛と欲情を混同するのは間違い。
  2. 自己中心的な考え方を卒業していれば、子どもでも人を愛せる。
  3. しかし恋愛は非日常なので、長続きしない。
  4. 好きな人と長くつきあうには、お祭りのような「愛」よりも、日常的な「好意」の方が大切。

参考文献

ぼくたちも妊娠できますか?―平凡な日常を驚きの世界に変えるQ&Aぼくたちも妊娠できますか?―平凡な日常を驚きの世界に変えるQ&A
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