気を遣ったつもり(?)がかえって失礼な翻訳

たった今、CSのFOXで、"HOUSE"のSeason1-15話をちらっと見てたんですよ。そしたら、服役歴のある肝炎患者が誰かに「ホモ」(音声では"homo"とはっきり言ってました)呼ばわりをされた、というくだりで、字幕がすごく変なことになってました。以下、うろ覚えで再現。
まず、英語音声はこんな感じ(翻訳済み)。


人物A「ホモと呼ぶなんて侮辱だ」
人物B「『ホモ』とは問題だな。より正確には『刑務所で強姦された』だろう」
ところが日本語字幕ではこんな感じ。

人物A「ゲイと呼ぶなんて侮辱だ」
人物B「『ゲイ』とは問題だな。より正確には『刑務所で強姦された』だろう」
ちょっと待て。その字幕じゃ、「同性愛者(ゲイ)と思われること自体が、刑務所で強姦されることよりひどい恥辱だ」っていう超失礼なニュアンスがモリモリ付け加えられちゃうわよ。おまけに登場人物ABは両方とも超ホモフォビックで嫌なやつだってことになっちゃうわよっ。特にBなんて主役なのに、主役の魅力落としてどうする!?
英語圏でも日本でも、「ホモ」("homo")という語にははっきりとした侮蔑のニュアンスがあり、ある人物を「ホモ」("homo")と呼ぶのは、その人が異性愛者であろうと同性愛者であろうとたいへん失礼なことです。そのへんの意味も含めて、原語の台詞では"homo"という語が使われてたんだと思うんですよ。一方、「ゲイ」("gay")という語は単純に「(男性の)同性愛者」を指すもっともニュートラルな語であって、それ自体に否定的なニュアンスはありません。つまり、ゲイと呼ばれて「侮辱だ」と怒る人は、同性愛者であること自体が何かとても悪いことだと思ってるってことになります。"homo"をわざわざ「ゲイ」と訳したんでは、完全に意味がねじれてしまうんですよ。

「ホモ」も「ゲイ」もカタカナの字数としては同じなのに、字幕でわざわざ「ゲイ」と言い換えた翻訳者の意図がわかりません。「差別語イクナイ!」とだけ思って勝手に変えたのかしら。それとも、「『ホモ』って語を使うと同性愛者がギャーギャーうるさいから」と安易に置き換えたのかしら。または、TV局に自主規制ガイドラインか何かがあって、機械的にそれに従って「ゲイ」にしたとかなのかしら。いずれにしても、前後関係を考えずにただ用語を置き換えたら、かえって失礼な文脈になるっつーのよっ。

おまけ

ここまで読んでもぴんと来ずに、「『ホモ』も『ゲイ』も大差ないじゃん。何が悪いの?」と思ってる方のために、もっとわかりやすい例を挙げておきます。


「あいつは俺をジャップと呼びやがった!」
「ジャップと呼ぶなんて、ひどい侮辱だ」

「あいつは俺を日本人と呼びやがった!!
「日本人と呼ぶなんて、ひどい侮辱だ」
上の会話と下の会話では、意味が違うでしょう? それと同じことですよ。

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