『ブロークバック・マウンテン』を観て「当時は今と違い同性愛が許されない時代だった」とか書いてしまう呑気さと傲慢さ
時代のせいにすんなよ
映画『ブロークバック・マウンテン』(レビュー/ネタバレ感想1、ネタバレ感想2)の悲劇性を時代のせいにして「今と違って悪い時代だったのね、ああ可哀想に」と決め付けて終わりなノンケさん*1が多すぎるのにムカついてます、最近。
- Google検索による「ブロークバック・マウンテン 許されない時代」検索結果 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%80%80%E8%A8%B1%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E6%99%82%E4%BB%A3&lr=
検索結果ページから、『ブロークバック・マウンテン』についてこの方たちが何を言っているか手当たり次第にコピペで引用してみましょう。
- 「同性愛が許されない時代のため」
- 「当時は今と違い男同士の恋愛など許されない時代であった」
- 「まだ同性愛が許されない時代」
- 「ゲイが許されない時代」
- 「同性愛が許されない時代だけに哀しい結末が」
わははははは。まるで今が同性愛が許される時代であるかみたいな口ぶりじゃないですか。この人たちの目はどこについてんでしょうね?
年表にしてみました
話をわかりやすくするために、年表にしてみました。
- 1963年:『ブロークバック・マウンテン』のストーリー中で、イニスとジャックが初めて出会う
- 1983年:『ブロークバック・マウンテン』のストーリーが結末を迎える
- 1997年:アニー・プルーが小説『ブロークバック・マウンテン』を雑誌に発表
- 1998年:ワイオミング州ララミーでゲイ男性マシュー・シェパードがヘイト・クライムにより殺害される
人は今でも「ゲイだから」という理由だけで殺されてるんです
上記の年表の一番下のところを見てください。まさしくあの映画の舞台となったワイオミング州で、今からほんの8年前、つまり『ブロークバック・マウンテン』のラストシーンより15年も後になって、「ゲイだから」という理由だけで虐殺された人がいるんです。詳しくはこちら(英語サイト)。
- The Murder of Matthew Shepherd http://www.geocities.com/corkymcg/crime/proj005.html
英語が嫌いな方はこちらを。
- 「マシュー・シェパード」検索結果 http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%89&lr=
「マシュー・シェパード事件なんて8年も前じゃないか。今は違う」と言い張りたい人はこちらをどうぞ。今年の2月の出来事ですよ、これ。
日本でもゲイは殺されてます
日本でだってヘイト・クライムでゲイが殺されてます。ちなみにこの事件は2000年ね。
最後に質問
さて、ここで質問です。映画『ブロークバック・マウンテン』を観て、「当時は今と違い同性愛が許されない時代だった」とか言ってわかったつもりになってるノンケさんご一同さま。アンタたちの言う「今」って、いつなの? あたしの目で見る限り、現代だって状況はそんなに変わっちゃいないんですけど。ていうか、アンタたちみたいな呑気で傲慢なノンケさんたちが今もなお世界中のイニスやジャックを追い詰め続けてるんですけどね。能天気に可哀想がって純愛だの感動だの言ってんじゃねえや唐変木め。
蛇足
はからずもこういった世の反応を浮き彫りにするという点で、これは非常に良い映画だったのかも。少なくとも原作者の希望したとおり(参考)、そこからconversations and discussionsが始まるきっかけにはなるんじゃないだろうかという気がしています。
*1:2006-04-14追記:もちろんこういう記事を書いている人が全てノンケさんだと断定することはできません。でも、同性愛を「許す」という傲慢な発想自体が限りなくヘテヘテで、ノンケ臭いと思うのよね。